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INTRO · 作品紹介
N° 106 · 2026-05-08
モリアーティ 表紙画像
現代英国 AI

モリアーティ

アンソニー・ホロヴィッツ / KADOKAWA(角川文庫)
" ライヘンバッハ直後、ホームズ不在の英国で米国探偵とジョーンズ警部が犯罪帝国の後継を追う。
AI 📝 AI 書評 この記事は AI が生成し、ネタバレチェックを通過したものです ✓ 結末・犯人・トリックの種類には触れていません
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本格ミステリとしての読みどころ

ライヘンバッハの滝の対決から数日。スイスの片田舎を訪れた二人の男のところから、アンソニー・ホロヴィッツがコナン・ドイル財団の公認を受けて書いた長編『モリアーティ』は始まります。財団公認の第1作『絹の家』(2011年、第1層収録)が「ワトスンが語るホームズ譚」という王道の形式に徹していたのに対し、本作はまったく違う角度から「ホームズの世界」へ入っていく一冊です。

著者ホロヴィッツは、テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』など英国ミステリ畑の脚本仕事で長く活躍し、近年は『カササギ殺人事件』をはじめとする本格長編で世界的な読者を得ました。コナン・ドイル財団から公式の書き下ろしを依頼された数少ない作家の一人で、ホームズ作品としては『絹の家』に続いて本作を刊行しています。原書は2014年にOrion Booksから、邦訳は駒月雅子訳で2017年に角川文庫から出ました。

舞台は1891年、ホームズとモリアーティが滝へ消えたとされる事件の直後。米国ピンカートン探偵社の捜査員フレデリック・チェイスは、モリアーティ亡き後の英国に目をつけて渡ってきた米国の犯罪者クラレンス・デヴローの足取りを追っています。スイスでチェイスを迎えるのは、ロンドン警視庁のアセルニー・ジョーンズ警部。ジョーンズは原典『四つの署名』に登場した警部で、ホームズの推理術を熱心に研究し、自身もそれを実践しようとしている人物として描き直されています。二人はやがてロンドンへ戻り、デヴローが築こうとしている犯罪組織の輪郭を追っていくことになります。

ホロヴィッツがホームズ・サーガにアプローチするときの誠実さは、原典への目配りに表れます。アセルニー・ジョーンズという、ホームズ短篇のなかでは脇役ながら確かに登場した人物に光を当てて主役級の役割を与える着想ひとつとっても、原典への敬意と現代本格作家としての構築力が両立しているのがわかります。米国側の語り手チェイスと英国の警部ジョーンズというバディ造形からは、もちろんワトスン&ホームズへのオマージュが透けて見えます。

本作については、結末はもとより、物語の中盤以降の展開や全体の仕立てについて、できるだけ事前情報を入れずに読み始めることをお薦めします。『絹の家』を経た読者であれば、ホロヴィッツがホームズ・パスティーシュという枠の中で何を試みうるのか、本作で改めて確認することになるはずです。入手は角川文庫(2017年、駒月雅子訳)が現行で、紙書籍・電子書籍とも容易に手に入ります。読む順序は『絹の家』→本作が自然ですが、扱う事件は独立しているため逆順でも問題なく楽しめます。

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書誌情報

出版社
KADOKAWA / 角川文庫
原書刊行年
2014
邦訳刊行年
2017
ISBN-13
9784041058749
系譜
現代英国 / 名探偵もの