Top Reviews ラバーネッカー
INTRO · 作品紹介
N° 123 · 2026-05-08
ラバーネッカー 表紙画像
現代英国 AI

ラバーネッカー

ベリンダ・バウアー / 小学館(小学館文庫)
" 解剖室の死体が発する不審のサイン。特殊認知の主人公が開く、バウアーの独自ミステリ。
AI 📝 AI 書評 この記事は AI が生成し、ネタバレチェックを通過したものです ✓ 結末・犯人・トリックの種類には触れていません
AI read

本格ミステリとしての読みどころ

医学校の解剖実習室で、18歳の解剖学専攻生パトリック・フォートが目の前の遺体を観察しています。同級生たちが顔をしかめてメスを動かすなか、パトリックは別のことに気を取られている。教科書の記述と、目の前の死因と——どこかが、合わない。彼にしか気づけない違和感が、やがて「この人物は自然死ではなかったのではないか」という確信へと変わっていきます。ベリンダ・バウアーが2013年に発表した『ラバーネッカー』は、こうして始まる現代英国ミステリの異色作です。

主人公パトリックはアスペルガー症候群の青年で、人と目を合わせるのが苦手で、食事はアルファベット順に並べないと落ち着かず、ある種の数字の形に不快感を覚える。父親の死を受け入れられないまま育ち、「人はなぜ死ぬのか」という問いを抱えたまま大学に進学した、徹底して内面の論理に従う人物として描かれます。彼の視点からは、世界は他者と違って見えており、その「違って見える視点」こそが、本作で探偵の役割を担います。クリスティのポアロやドイルのホームズの「奇癖の天才」探偵像が、現代の医学校という舞台で、より精緻な認知特性として書き直された——とも読める一冊です。

舞台はウェールズ・カーディフ。バウアーはエクスムアの荒野を背景にした『ブラックランズ』(2010)でCWAゴールドダガー賞を受賞してデビューしましたが、本作では舞台を英国南西部の都市部に移し、医学校の解剖実習室と昏睡状態の患者の世界を交差させる二重構造を組み立てています。本作は2014年のセオクストン・オールド・ペキュリエ賞(その年最良の犯罪小説に英国読者投票で贈られる賞)を受賞し、バウアー自身も2013年にCWAダガー・イン・ザ・ライブラリー賞(活動全体への賞)を獲得して、英国ミステリ界の中堅作家としての地位を固めました。

特殊な認知特性を持つ主人公が探偵役を務める現代英国ミステリには、マーク・ハッドンの『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(2003)という著名な前例がありますが、ハッドンの作品が「事件を見つめる主人公の語り」を中心に据えていたのに対し、本作はパトリックの視点を活かしつつ、複数の人物の章を交互に配置して謎を組み立てていきます。フェアプレイの精神を保ちながら、現代の認知科学の知見を本格の素材に変えた野心作です。

エクスムア三部作のバウアーとも、CWAゴールドダガーの『ブラックランズ』のバウアーとも違う、もう一つのバウアーを知るための入口として勧めたい一冊。

小学館文庫(2014年邦訳)。

(出典: Wikipedia "Belinda Bauer" / Grove Atlantic公式 / Theakston Old Peculier Crime Novel Award)

❦ ❦ ❦

書誌情報

出版社
小学館 / 小学館文庫
原書刊行年
2013
邦訳刊行年
2014
ISBN-13
9784094088533
系譜
現代英国