review notes
ミステリーとしての読みどころ
黄金期アメリカのミステリの書き手による、後期の心理サスペンス。
出版社の重役として社長令嬢を妻に迎え、満ち足りた暮らしを送っていた主人公。ある晩、別れたはずの前妻と街角で再会したことから、その生活に暗い影が差していく。家族をかばう気持ちからついた一つの嘘が、第二、第三の嘘を呼び、やがて主人公は殺人事件のただ中へと引きずり込まれる。
パトリック・クェンティンは、リチャード・ウェッブとヒュー・ウィーラーが組んだときの合作ペンネーム。本作は、本来は誠実な人間がたった一度の偽りからほころびを広げていく、というこの書き手たちの得意とする構図を体現した作品で、追い詰められる男の内面を密度高く描き出す。謎解きの興味と人物の心理が分かちがたく結びついた一編。
(出典: 東京創元社 書誌ページ / The Passing Tramp ほか英語圏書評)
❦ ❦ ❦