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REVIEW · 書評
N° 002 · 2026-05-05
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現代国内 ★ イチオシ

そして五人がいなくなる

はやみねかおる / 講談社(講談社青い鳥文庫)
" 名探偵・夢水清志郎が登場するシリーズ第1作。子どもを次々消す怪人「伯爵」事件に挑む。
#名探偵に身を任せる#天才肌の変人#寝る前にちょっとだけ
📝 管理人イチオシ書評 管理人実読・本サイト基準でイチオシ判定 ✓ 結末・犯人・トリックの種類には触れていません
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本格ミステリとしての読みどころ

子どもの頃に出会うか、大人になってから出会うかで読み心地が大きく変わる、不思議な「再会」を約束してくれるシリーズの第1作です。

著者は、はやみねかおる。1964年三重県伊勢市生まれ、三重大学教育学部数学科卒業。元は小学校の教師で、教室で本嫌いの子どもたちを夢中にさせる本を探すうちに、自分で書き始めた——という来歴の持ち主です。1989年に「怪盗道化師(ピエロ)」で第30回講談社児童文学新人賞 佳作入選で作家デビュー、14年の教職を経て専業作家へ転身。代表作には本シリーズ「名探偵夢水清志郎事件ノート」のほか、「怪盗クイーン」シリーズ、「都会のトム&ソーヤ」シリーズなどがあります。

本書『そして五人がいなくなる』は、その「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズの第1作。1994年に講談社青い鳥文庫から刊行されました。シリーズはこのあと2009年まで15年にわたって刊行が続き、累計360万部超を記録。日本のジュニア向け本格ミステリの代表シリーズとして、いまも読み継がれています。

物語の主人公は、名探偵を自称する夢水清志郎(ゆめみず・きよしろう)。元大学教授で、いまは隣家の岩崎三姉妹宅に隣接する家に引っ越してきたばかりの怪人物です。物忘れの名人で、自分がご飯を食べたかどうかさえ忘れてしまう。おまけにものぐさでマイペース。「名探偵」を自称しながら、家賃も食費も不安定という、児童向けミステリには珍しい型破りな探偵像です。

事件のほうは、子どもを次々消してしまう怪人「伯爵」事件。物語は、岩崎三姉妹(三つ子の長女・亜衣、真衣、末妹の美衣)の語り口で進み、彼女たちの夏休みに事件が忍び寄ってくる。子どもが次々と「消えていく」という、児童向けでありながら本格ミステリの王道を踏まえた事件設定です。

本書を読むときの楽しみは、何より夢水清志郎というキャラクターと、語り手・亜衣との掛け合いの軽妙さにあります。名探偵がマイペースで頼りなく、彼の生活を心配する側に三姉妹が立つ——その逆転の構図が、シリーズ全体のトーンを決めています。本格ミステリの作法は丁寧に踏襲されつつ、児童向けの読みやすさを保ちながら、笑いと謎解きが両立している。長く読まれてきた理由がここにあります。

文体も極めて読みやすく、ジュニア向け文庫として組まれているため漢字にもルビが多めに振ってあります。ただし「子ども向け」と侮ると驚くタイプの作品で、海外古典本格(クリスティ等)へのオマージュや、本格ミステリの作法への目配せが随所にあり、大人が読んでも十分に楽しめます。日本のジュニアミステリ・新本格世代の入り口として、本書から本格にハマった読者は数多くいます。

講談社青い鳥文庫で容易に入手でき、Kindle 版もあります。シリーズはこの後『亡霊は夜歩く』『消える総生島』『魔女の隠れ里』と続いていくので、気に入ったら順番に進めるのがおすすめ。子どもに勧めたい本格、もう一度子ども時代の読書感覚を取り戻したい大人にも届く一冊です。

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書誌情報

出版社
講談社 / 講談社青い鳥文庫
原書刊行年
1994
邦訳刊行年
1994
ISBN-13
9784062754330
系譜
現代国内